京都 GOTOWN FREAK 磔磔 ライブレポート

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Update: 2023.05.30 / Published: 2023.05.29

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西寺郷太ソロ、土岐麻子、NONA REEVESの3部構成、フェス形式の贅沢極まりないラインナップ。NONA REEVESが京都でライブを行うのは2009年8月以来、14年ぶりのことだ。磔磔出演は初めてという西寺郷太、ソロとしてバンド編成でライブを行うのも初。NONA REEVESと土岐麻子が対バンで演るのも初(ヤノフェスでのコーラス参加は除く)と実は初物づくしの「フェス」。企画者の西寺郷太は京都出身であるが大学から東京に進学したため磔磔とは馴染みがあまりないという。そんな中で彼が上京し早稲田大学音楽サークルで出会った仲間と組んだバンドがNONA REEVES。京都の老舗磔磔の印象について「18歳まで、この場所は大人過ぎて敷居が高く思えたんです」と彼は語った。

磔磔といえば京都の著名なロックバンドや海外のレジェンド達が演奏する老舗ライブハウス。ギタリストの奥田健介は滋賀県大津市出身、高校時代に BO GUMBOS のパフォーマンスを観るなど通っていたようで、バンド内の音楽嗜好の違いも伝わってくる。

些か京都においてアウェイ感の強いこのメンバーでどこまで盛り上がるのだろうか?

結果的に心配は杞憂に終わった。観た方は体感したであろうがこんなに盛り上がった磔磔はかつて無いのでは?というくらい最高のライブになった。

昨夜末の「ノーナとHiPPY CHRiSTMAS 2022」も、4月の土岐麻子ビルボードライブ(Guest 堀込泰行)も素晴らしいライブであったが、今回のライブはコロナ禍もようやく終わりを告げスタンディングでコール&レスポンスまで行える三年ぶりのイベント。「磔磔」の魔法、ライブハウスだからこその歓びが身体中に降り注ぐ最強のグルーヴ感がそこにあった。

①西寺郷太ソロ

NONA REEVESとはバンドメンバーが異なり、旧知のベースの村田シゲ(口口口)以外、近年の「西寺郷太ワークス」をプロデュース面でも支える大樋ゆう大 (SANABAGUN.) : Keyboards / Bandmaster、岡本啓佑(黒猫チェルシー):Drumsといった新世代のメンバー。新譜『Sunset Rain』からの選曲だけではなく、過去の作品からの選曲も織り交ぜた内容はファンにとって非常に嬉しい「ソロデビューライブ」になったのではないだろうか?

ラスト曲「都会(大貫妙子のカバー曲)」ではサプライズで土岐麻子が登場。土岐麻子は以前に「都会」をカバー。当時のスローテンポのアレンジも素晴らしかったが、今回は大樋ゆう大アレンジによるアップテンポなグルーヴが心地良い。長年、NONA REEVESでベース担当だった村田シゲによる西寺郷太に対するツッコミがキレ味鋭く観客を盛り上げていた。

②土岐麻子

リズム・セクションは同じまま、キーボードが冨田謙にチェンジ。ギターに高木大丈夫を加えたメンバーにてスタート。磔磔に初登場の土岐麻子、彼女にはビルボードライブのゴージャスさも似合うが、磔磔で今回のバンドが繰り出すグルーヴ感・観客の熱気・三位一体で生まれる「熱さ」に感激してしまった。特に「美しい顔」での、村田シゲのベース演奏がFunky度Max。バンドマスター冨田謙の安定感は言わずもがな、土岐麻子バンド初合流という高木大丈夫のギターもレジェンド感のあるブルージーなプレイが素晴らしい。全体的に選曲も素晴らしくラストの「Gift ~あなたはマドンナ~」で盛り上がりは頂点へ。京都の初夏の夜を華麗に演出した彼女の歌声を聴けた観客は本当に幸せだと思う。

③NONA REEVES

メンバーが登場するや否や凄い盛り上がり。満員御礼の磔磔でこれだけの歓声を聴くのは久しぶりのことだ。ベースが林幸治(TRICERATOPS)に代わり、NONA REEVES、ギター奥田健介、ドラム小松シゲル、キーボードは引き続き冨田謙、コーラスに真城めぐみが加わりスタート。1日にこれだけ素晴らしいミュージシャンが入れ替わり立ち替わりしかも磔磔にて聴ける贅沢。転換もスムーズでストレス無く、オープニングの「ガリレオ・ガール」で一気にヒートアップ。LOVE TOGETHER」から「DJ!DJ!〜とどかぬ想い〜」のメドレーでコール&レスポンスの渦に。凄い!NONAも凄いが観客が凄い!この日を心待ちに全国から集まった感があり、テンションが高い!途中、京都での少年時代を回想した「Trance」、奥田健介作曲の「NOVEMBER」としっとりとしたメディアムナンバーを聴かせ、「O-V-E-R-H-E-A-T」から「ラヴ・アライヴ 」「未来」で頂点へ。

アンコールは土岐麻子登場で2003年にリリースされたデュエット曲「イージーラヴ – EASYLOVE」、彼女が歌唱参加した「透明ガール」。真城めぐみのリードパートにも大興奮、アーティストとオーディエンスが一体化する中でエンディングを迎える。

アンコール最後に演奏メンバー全員登場。西寺郷太の締まらないトークにすかさず小松シゲルのツッコミ。メンバーの仲良さが伝わってくる喜びに包まれ終演した。

全体的に2時間超という時間に3バンドという凝縮された内容であったが時間的にも3バンドの配分バランスが非常に良く、楽しめた人が多かったのではないだろうか?バンドメンバーだけではなくオーディエンスもベテラン勢と若手のバランスが良かったのも特徴。京都での「フェス」、第2回も是非期待したい。